投稿日:2026年2月25日 / 最終更新日:2026年2月25日
10年ぶりにバレエを再開したら股関節が痛い…
― ブランク明けでケガをしやすい本当の理由 ―
「もう一度、バレエを踊りたい。」
10年ぶり、あるいはそれ以上のブランクを経てレッスンを再開する大人バレエさんは少なくありません。
しかし再開して数回で、
・股関節の付け根が痛い
・アンディオールすると詰まる
・レッスン後に歩くのがつらい
という症状が出るケースが非常に多く見られます。
「昔は平気だったのに…」
実はそこに、ブランク明け特有の身体の変化があります。
柔軟性のピークはいつ?
一般的に女性の柔軟性のピークは10代後半と言われています。
そこから何もケアをしなければ、年齢とともに可動域は少しずつ低下します。
10年間バレエをしていなければ、
・筋膜の滑走性低下
・腱の弾性低下
・関節包の硬さ
がかなり進み、股関節は確実に硬くなります。
「昔はもっと開いた」という記憶がある分、現実とのギャップに焦りが生まれます。
この理解がないまま再開すると、ケガのリスクは一気に高まります。
復帰組の身体に起きていること①|柔軟性低下とアンディオール可動域の低下
開脚が戻らない。
股関節からアンディオールできない。
それでも以前の5番ポジションを作ろうとすると、
柔軟性低下・アンディオール可動域低下
↓
無理なストレッチ
↓
前もも筋への負荷増大
↓
股関節前面の炎症
という流れが起こります。
詰まりに見えても、実際は過負荷による炎症であることが多いのです。
復帰組の身体に起きていること②|筋力低下
ブランク期間で最も落ちやすいのは、
・腹部インナーマッスル
・殿筋群
です。
特に出産歴のある方は、
腹横筋や骨盤底筋などの腹部インナーマッスルがかなり弱くなっているケースが多く見られます。
「お腹に力が入らない」
「引き上げができない」
という状態のまま脚を上げようとすると、前ももや股関節前面に負担が集中します。
脚を上げる力よりも、
“支える力”が不足していることが問題です。
復帰組の身体に起きていること③|体重増加
数キロの変化でも、
片脚立ちやジャンプでは大きな負荷になります。
特に軸足側の股関節へのストレスは顕著です。
復帰組の身体に起きていること④|疲労回復力の低下
若い頃は一晩で回復していた違和感が、数日続くことがあります。
炎症が抜けきらないままレッスンを重ねると、慢性化しやすくなります。
復帰組の身体に起きていること⑤|体力・持久力の低下
1時間半のレッスンが思った以上にきつく感じ、
終盤でフォームが崩れ、代償動作が増えます。
疲労下での動きはケガのリスクを高めます。
復帰組の身体に起きていること⑥|バランス感覚の低下
バランス能力は加齢とともに少しずつ低下します。
ピルエットで軸が安定しない、
ルルベが不安定になるなど、神経系の再適応が必要です。
レッスン頻度の多さも大きな要因の一つ
復帰組の方はとても熱心です。
週4〜5回通うケースもあります。
しかし、
・柔軟性は落ちている
・筋力も落ちている
・回復力も落ちている
このような状態でレッスン頻度が多いと、疲労が抜けないまま蓄積します。
臨床上、再開後は週2回程度から始める方が、
安全なケースが多いと感じています。
身体が順応する時間が必要なのです。
ケガを防ぐために必要なこと
・急いで可動域を戻さない
・まず安定性を作る
・アンディオールは股関節から
・レッスン頻度を抑える
・疲労を管理する
以前の自分に戻すのではなく、
“今の身体に合った踊り方”を再構築することが大切です。
当院での復帰サポート
当院ではまず身体全体を評価し、
・立ち方
・アンディオールの作り方
・股関節可動域
・体幹安定性
を確認します。
負傷箇所への治療を行いながら、
無理のない復帰ペースを設計し、
バレエ動作修正とピラティスによる再教育を行います。
まとめ|いつまでも長く踊り続けられるために
バレエを再開するという決断は、とても勇気のいることです。
そして本当に大切なのは、
「どこまで開くか」でも「どれだけ高く脚が上がるか」でもなく、
これからも長く踊り続けられる身体をつくることではないでしょうか。
10年のブランクは決してマイナスではありません。
ただ、身体の条件が変わっていることを理解し、
今の自分に合ったペースと方法で整えていく必要があります。
焦って取り戻すよりも、
土台を整え直す。
無理に可動域を広げるよりも、
安定して使える範囲を増やす。
その積み重ねが、結果的に
「痛みなく踊り続けられる未来」につながります。
大人バレエは競争や比較ではないと思います。
もし今、股関節に不安があるなら、
それは整えるタイミングなのかもしれません。
これからも、いつまでも、
安心して踊り続けられる身体でいてほしいと願っています。
著者プロフィール 伊集院 博
兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務める。
『バレエ障害をゼロに!』をミッションに掲げ、ケガから最速でバレエ復帰できるように日々臨床に励んでいる。
バレエ動作修正やトレーニング指導にも定評があり、院内にマシンピラティススタジオを併設し、プロバレエダンサー、ジュニア、大人バレリーナを年間1,000人以上サポートしている。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
主な資格と実績
- 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- ケアマネージャー
- シュロスベストプラクティスⓇ
(側弯症運動療法の資格) - 側弯症ピラティスインストラクター
- BESJ認定ピラティストレーナー
- BTA認定バレエダンサートレーナー
- ハワイ大学解剖実習終了
- 治療家大學技術講師就任














